3月
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遠野市役所 文化の復興を目指して(2)

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遠野文化研究センターはもともと遠野の文化を調査、研究、発信するために設けられました。しかし、東日本大震災後には海岸沿いの三陸地方への支援を精力的に行っておられます。

 

文化財レスキュー活動は津波の被害に遭った議会資料、新聞スクラップなどを大槌町立図書館からあずかり、様々な方々から教わった知識や技術を生かして修復が行われていました。中でも印象に残ったのはスクウェルチ・パッキング法でした。資料の水分を取るために数ページごとにキッチンペーパーで挟んだ新聞紙をはさみ、布団圧縮袋に入れて掃除機で空気を抜くという作業を3回程繰り返します。資料の修復の1つの段階であると同時に、この方法によって資料に生えたカビの進行を抑えられます。私は様々な方法で資料を守れること、自分の身近にあったものがこのような場面で役立つということに驚き、感心もしました。他にも破れたり穴が開いたりした資料の補修やその後資料を洗浄後に乾かすための大きな扇風機など、いろんな驚きや発見がありました。そしてなにより、このような方法を伝えようとした方々や試行錯誤をされた方々の思いに触れたようで温かい気持ちになりました。

 

また、献本活動では全国から送られてくる書籍を、本を必要としている小中学校や図書館に送っておられます。流れとしては送られてきた書籍の受付、選別、入力、ラベル貼り、箱詰め、保管を経て受け入れ準備の整ったところへ配本が行われます。選別では登録できる本とできない本とに分けます。この選別によって献本活動により提供できる書籍の質が上がる、大切な作業とのことでした。

 

データ入力では一冊ごとにだれが送ってくださったかまでを登録します。ラベルを貼ったあとは、市役所とは別の場所にある大きな倉庫を書庫にして保管しています。作業をされているお部屋には寄贈先の学校からの感謝の色紙やボランティアさんからの手紙などがありました。現在までに約26万冊、最大で1日492箱ものダンボールが送られてくることもあったとか。大切なことは、“読んでほしい“と思うような書籍を贈る。ということでした。たくさんのダンボールを空けても、募集していない雑誌、ラインが引かれた書籍、カバーがない書籍など寄贈には使えない書籍がたくさん。加えて、古い百科事典や自然科学分野の書籍は時を経ると内容が古くなってしまいます。「いらなければ捨ててください」とメッセージが入っていることもあるそうです。捨てる、ということがどれだけの労力になり、手間になるのか、書籍がどれだけ重いのか。私はお話を聞いて「捨ててください。」と送ってくださる方の思いも本当で、ただ現地では量が多くなるほどに対応に精一杯で。どちらも思いも真っ当なだけに、歯がゆくなりました。

 

さて、どうして遠野がこのように沿岸部の復旧・復興を支援しているのでしょうか。それは遠野は古くから三陸沿岸部と内陸部をつなぐ交通・流通の要衝として栄え、三陸沿岸と文化的なつながりが強くあったという背景があります。まず災害直後には衣食住の回復が必要でした。遠野文化研究センターでは、その後の生活における文化の復興のお手伝いとして、これらの活動による文化的な支援を行っています。三陸地方から遠野の仮設住宅にやってきた方々もたくさんいます。

 

この日、実際に被災された臨時職員の方ともお話をすることができました。

 

実際に家が流されてしまったこと。現在仮設住宅に住んでいること。阪神・淡路大震災も経験したこと。それから安否情報のお話や親族の方々についてのお話も少しずつではありましたが聞くことができました。学部で学んだことに現地でも触れることができ、被災されていた方々が私の思っていたよりも様々なお話をしてくださいました。その経験を聞いても私にはなにもコメントすることができないかもしれません。しかし、自らの経験を話してくださいます。それは今、このタイミングでこの場所で出会うことができ、お話しできた、という当たり前だと思えばそれだけで終わってしまうようなことの上に在る、ということに気が付くことができました。

 

 

 

(写真2)スクウェルチ・パッキング法。あなたの家にもある掃除機が登場します。

 

(写真3)エタノールを噴霧した後、紙が破れないように網、不織布で挟み込みます。それを水を張ったバットに浮かべた板の上でハケで泥砂を除去します。

(写真4)資料の水気をある程度ペット用のタオルでとった後、反ったりしないようにろ紙やダンボールに挟みながら夏は数時間、冬は1日扇風機にかけ乾燥させます。

(写真5)泥をとり、新しいスクラップブックに貼り替えます。1枚ずつ手作業です。

 

(写真6)全国から送られてきた書籍です。ピーク時はもっとたくさんでした。

 

(写真7)お手紙も届いており、寄せ書きも飾られています。

1 コメント “遠野市役所 文化の復興を目指して(2)”

  • 西村弘 2012年3月20日 3:13 PM

    読むだけでも、気の遠くなるような作業量ですね。しかし、多くの人たちが根気よく、少しずつ仕上げていくことで、いつの間にか仕事の山が消えていく、そんな経験をしているんですね。また、寄贈図書の話は、授業でやったクロスロードそのものですね。ただ、それが昔の話ではなく、現在ただいまのこととなると・・・。授業の時のように簡単に決断はつきませんね。最後の、「今、ここ」の話。当たり前のように思ってる「今、ここ」が、けっして当たり前ではないと気づく機会はあまりありませんが、それはどの「今、ここ」にもあるものではないかと感じさせるものでした。山根さんが感じた「今、ここ」への不思議さと感慨が、よく伝わってきました。